「スギナは酸性土壌を好む」はウソだった!通説は実はウソだらけ。 #スギナ #ツクシ の真実を知りたい。2023.08.23
2023.08.23
スギナについて興味を持ったのでちょっと調べてみたら、意外と誤った俗説が流布されているようで驚きました。そんなわけで、スギナについてちゃんとした研究報告などを調べてみることにしました。
ウィキペディアには何と書いてある?:
みんな大好きウィキペディア。でも、実はちょっと胡散臭い?ウィキペディア。そこにスギナはどんな風に書いてあるのでしょうか。
その「特徴」の欄には、こんなことが書いてあります。
- 酸性の土地を好む。
- やせた土地を好む。
- 繁殖力が強い。
- 浅い地下に地下茎を伸ばす。
- 生育には湿気の多い土壌が適する。
ウィキペディアの記載から5つ挙げてみましたが、今回、改めて調べてみたところ、これ全部間違ってるんじゃないかと思うのですよね。
スギナのウソ:
「スギナは酸性土壌を好む」は、ウソ:
スギナについて調べていて真っ先に出てくる情報の1つが、この「スギナは酸性土壌が好き」という話。でもこれ、ウソのようです。
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/SUGINAmanual_R.pdf
上のリンクは農研機構の研究文書「除染後畑地のスギナ防除対策」ですが、福島第一原発事故後の除染後畑地のスギナ防除対策について書かれています。その11ページの囲み記事に、次にように書かれています。
スギナは酸性⼟壌を好む︖
これは誤りです。 “⼟壌改良を施して中性に近い,年に何回か耕起される畑地ではスギナは繁茂しにくい”ことと,“畦や法⾯など作物を栽培しないので耕起せず,⼟壌改良資材も施⽤しないため酸性になっている⼟地にはスギナが多い”ことを合わせて,スギナが酸性を好んでいるという俗説が流布しているのでしょう。実際には,中性や弱アルカリ性の⼟でもスギナは旺盛に⽣育し,強酸性⼟壌ではむしろ⽣育が不良になります。因果と相関が混同されている⾒本ですが,⼀度広まってしまった俗説はなかなか訂正されない例です。
また、こちらの資料(日本雑草学会会報(日本雑草防除研究会))の「スギナの繁殖特性と環境応答に関する基礎的研究」24ページにも同趣旨の記載があります。
「スギナの繁殖特性と環境応答に関する基礎的研究」
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030420598.pdf
スギナは土壌の酸度に関係なく繁茂するようです。
「スギナの根茎は地下の浅い所にある」は、ウソ:
これも前述の農研機構の資料によるのですが、9ページの記載と写真を見ると、スギナの根茎は地下深いところに発達しており、土壌表面より30cm以下の部分に多く、1m以上の深さにあることも普通なのだそうです。
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/SUGINAmanual_R.pdf
ここまで深いところにあるのでは、もはや人力で完全除去するのは不可能ですし、機械を使っても困難でしょう。除草剤も完全には行き渡らないはずです。
なお、日本雑草学会会報の記事によれば、スギナの地下茎には根茎と塊茎があり、休眠はせず、年間を通して高い萌芽力をもっているそうです。
「スギナの繁殖特性と環境応答に関する基礎的研究」
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030420598.pdf
「スギナは強い雑草」は、ある意味で正しくない:
防除、排除するのが困難な雑草であることは確かなので、その意味では強い雑草。地下深いところに根茎があり、抜き取っても、除草剤を撒いても、素早く復活してくるという意味で、強い雑草。
しかし、様々な他の雑草との競合でも強いかというと、そうではないようです。特にスギナよりも背の高い雑草との競合になると、スギナの生育は衰えて目立たなくなるようです。
つまり、結論としては、「スギナは人間に対しては強いけど、他の雑草に対しては弱い」ということのようです。
我が家の家庭菜園での経験ですが、母が慣行農法で管理していた頃には、毎年大量のスギナが生えてきて、これを除去するだけで大変なことになっておりました。しかし、私が自然農の考え方を取り入れながら管理するようになり、畑にシロツメクサを始めとする植物が増えてくると、スギナは放置しても目立たなくなってきました。
ちなみに、他の雑草に比べてスギナは痩せた土地でも生育できるので、痩せた土地では生えてくる雑草はスギナばかりになるそうですが、肥沃な土壌ではスギナもガンガン生育するそうです。決して「スギナは痩せた土地が好き」というわけではないのですね。
スギナの真実:
除草剤、雑草抜き、全面耕起するとスギナが増える:
他の雑草と違ってかなり深いところに根茎をもち、そこから何度でも復活してくるスギナ。そして、他の雑草との競合では必ずしも強くはないスギナ。
この2つの性質から、次のような結論が導き出されます。
除草剤を使ったり、雑草抜きをしたり、全面耕起すると、一時的にスギナを含む雑草は消えて無くなるが、すぐにスギナばかりが旺盛に繁茂するようになる。
人間の働きで競合する他の雑草が一気に消えれば、あとはスギナのひとり天下。これは当然の帰結ですね。
スギナ防除の最適時期は冬:
スギナは春の早い時期からメキメキと生えてくるので、防除も春から行う方がほとんどだと思うのですが、実はスギナ防除の最適時期は冬。
冬の間、越冬芽が地表付近に集まって春を待っています。スギナが再生してこない冬にこの越冬芽を叩くのが、スギナ防除に有効だそうです。
スギナは胞子で増える。確かにそうなんだけど、実際はそうでもない:
スギナは種子ではなく胞子で増えます。お馴染みの土筆(つくし)1本から、一説によれば10万ともいわれる胞子が放出されるそうです。これだけ聞くと、スギナってめちゃめちゃ繁殖力高そうですよね。
「スギナの繁殖特性と環境応答に関する基礎的研究」
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030420598.pdf
しかし、上の記事の25ページによれば、胞子からの発芽定着には、温度、土壌水分など多くの環境条件の制約があり、自然条件下において胞子からの増殖は少ないと考えられているそうです。
根茎を伸ばして増殖する植物ではありますが、繁殖力はそれほど高くないみたい。
スギナが生育できない環境はあるのか:
日本雑草学会会報の記事(25ページ)によりますと、スギナはその地下茎(塊茎および根茎)も含めて、土壌が凍結するような環境では2日間で死滅するそうです。
意外と低温に弱い…と思われたかもしれませんが、スギナの根茎がある地下1mまでが凍ることって、まず無いんですよね。
「スギナの繁殖特性と環境応答に関する基礎的研究」
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030420598.pdf
この点から逆に言うならば、寒冷地であっても、早春にスギナの根茎が生き残っているような所は、厳冬期でも土壌は凍結していない…と考えてよいのではないでしょうか。
私の住む北海道赤平市は特別豪雪地帯の寒冷地ですが、普通にスギナが浅いところで越冬しております。たぶん厳冬期でも土壌は凍結していないのでしょうね。
なお、摂氏45度以上の高温条件や乾燥条件では、塊茎より根茎の方が耐性が高く、根茎は65%の水分を失うまで死滅しないとか。乾燥にはかなり耐える植物のようです。
結局、不良環境に対するスギナの耐性は非常に高いみたい。
結語:
結局、畑のスギナはどうするのか?
色々な方法があるとは思うのですが、私は、自然農・リジェネラティブ農業(環境再生型農業)をやっていきたいと思っておりますので、農薬を使ったり土を掘り返したりするのではなく、環境と生物多様性の中にあってスギナとも付き合っていく…という方針でやっていきたいと思っております。
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